節分の日と言えば、豆まきに恵方巻。パーティが始まる前から、様々な準備がなされておりました。
まずは豆の準備。日本にいた頃は、スーパーに行けば簡単に手に入るような豆まき用の豆は、こちらバーゼルで手に入れることは至難の業。しかも、29人の豆まきに必要な豆は、一体、どこからわいてきたのでしょうか? 答えは、野川邸の台所にあります。野川さんはバーゼルで手に入る大豆を、じっくりと水に浸し、そして乾煎りする変わりに、オーブンで焼き上げて、非常に香ばしくて美味しい炒り豆を完成させておられました。お恥ずかしながら、筆者は未だかつて炒り豆を作ったことはありません。そして、沢山の豆を炒る手間を省くためにオーブンを利用したという野川さんのアイディアにも、脱帽でございます。
お次ぎは恵方巻の準備。バーゼルで声楽(ソプラノ)を勉強されている高山潤子さんが3時から野川邸に参上し、野川さんとお二人で29人分の太巻きの下ごしらえを開始。18時より、続々と集まった音楽家達が加わり、炊き立てのご飯に、野川ブレンドの寿司酢を加えて酢飯作り。野川さんの二本のしゃもじさばきと、4人の団扇仰ぎ人の見事なチームプレーにより、2升4合の寿司飯が完成。そして巻き簀を携えた音楽家達が、次々に太巻き作成に取りかかります。一番気合いが入っていたのは、素敵なエプロン姿で登場したチェンバロ奏者の脇田英里子さんでしょうか。具は卵、きゅうり、アボガド、カニかまぼこ、鮭、古漬け、隠し味にマヨネーズ等。ここで、音楽家達はしっかり隠れ花嫁修業・・・。みんな立派に太巻きを作ることができるようになりました。(おそらく・・・。)筆者は寿司に具をのせて、打楽器奏者のリリーこと、関口百合子さんに仕上げの「巻き」をお願いしました。見事な巻きっぷり、ありがとうございました。最後に野川さんを唸らせた巻きっぷりを披露してくれたのは、ピアニストの栗田麻子さん、そして「がんばりま賞」をもらったのは、ビオラ&バロック・バイオリン奏者の朝吹園子さんでした。
さて、7時過ぎにお客様も勢揃いして、まずは2/3に誕生日を迎えた朝吹園子さん、2/2に誕生日を迎えた脇田英里子さん、そして1/30に誕生日を迎えた関口百合子さんを祝して、バースデーソングの合唱。そして、いよいよ豆まきの開始です。筆者、最初に鬼役を命じられました。仮面を被って棒をひっつかみ、鬼の演技するも、結構痛い豆つぶの攻撃にあい、敢えなく退散。順々に鬼役を交代し、初めて日本文化を体験するヨーロッパの若手音楽家達も、多いに盛り上がって鬼を演じたり豆をまいたりしていました。鬼役最後を務めたのは、野川ご夫妻。日頃は大人しい音楽家達も、野川ご夫妻の厄払いの為には懸命に豆をぶつけます!野川夫人、アレクサンドラさんの豆のまきっぷり、そして鬼役も見事でございました。
盛り上がったところで、力作の恵方巻が登場。野川家の方位磁針が登場して、「今年は西南西を向いて、願い事をしながら無言で食べるように」との指示がありました。静寂につつまれた野川邸の広間で、27名のゲストが黙々と太巻きにかぶりつく様をご覧下さい。若干16歳の貴公子ピアニストのマティス君が、先頭で最後まで一生懸命上品に食べる様子が、筆者には忘れられません。そして相変わらずお茶目で可愛いオーボエ奏者の永塚千賀子さんは、かなり大きな口でかぶりついていました! しかし、一番大きな口をあけたのはやはりチェロ奏者のマーチス君でしょう! マティス君、永塚千賀子さん、マーチス君、朝吹園子さん、そして 栗田麻子さんは、今年の秋に日本でのコンサートに出演することが決まっています。どうぞお楽しみに!
太巻きを食べ終えた後には、野川家特製の具沢山けんちん汁が登場。最後には、野川家特製アイスクリームの柿ソース添えが登場。昨年日本でのコンサートで活躍した陽気なイタリア人コンビ、バイオリン奏者のステファーノ君とチェロ奏者のミケーレ君は、「俺にも、柿とアイスクリームいう日本語がわかるぞ!」と大喜びで、デザートを頬張っておりました。
食事の後は、恒例のコンサートで締めくくり。今年の出演者は以下の通り。
1) Michele F. Marrini Violoncello
2) Stefano Menna Violine
3) Simone Strohmeier Violine
4) Sonoko Asabuki, Junko Takayama, Thomas, Chikako Nakatsuka
Barockvioline, Sopran, Barockoboeduo
5) Sonoko Asabuki Barockvioline und Viola
ミケーレ君は、野川邸での初のソロ演奏。非常に構成の面白い現代曲の面白さについて熱弁をふるったあと、演奏を楽しませてくれました。ステファーノ君は、新年会でお披露してくれた新しいバイオリンで、さらに磨きのかかった演奏を。シモーネさんは、バイオリンで小曲を弾いてくれましたが、目覚ましい成長を感じさせる演奏でした。野川さんも、「今日のシモーナ、殊勲賞だな」と仰っていました。さらに、今回はトーマス君と永塚千賀子さんのバロック・オーボエ、朝吹園子さんのバロック・バイオリン、そして高山潤子さんのバロック・ソプラノという面白い構成の、しかもバロックの雰囲気あふれる合奏を聞くことができました。特に筆者はバロック・オーボエを聞くのは初めてで、非常に面白かったです。千賀子さんの話によると、現代のオーボエと違って、指のところにあるキーも違えば、マウス・ピースも大きくなっているとのこと。どちらも器用にこなす千賀子さんには脱帽です。最後のとりを務めたのは、誕生日を迎えた朝吹園子さん。今回、野川邸でのサロンコンサート初出演で、間近にいるお客さんを前に非常に緊張されたとか!その中でも1人堂々と、バロック・バイオリンとビオラの音色を聞かせて下さいました。園子さんは、ドイツで長年ビオラを学んでおられたのですが、去年からバロック・バイオリンを学びにバーゼルに来られています。
バイオリンとビオラでは大きさも違うし、「なんて園子さんはチャレンジャーなんだ!」と筆者は思っていたので、後日、思い切って質問をぶつけてみました。「なぜ、バロック・ビオラでなくて、バロック・バイオリンを専攻したんですか?」。そうすると、「バロック時代には、バイオリンが主流だったので、ビオラのソロの曲というのが存在しないんですよね。」とのこと。なるほど、確かにバロック時代はリュートやビオラ・ダ・ガンバと言った、他の弦楽器も活躍していましたし、ビオラという楽器は発育途中で、作曲家がビオラをメインにした曲を作らなかった。だからバロック音楽を理解するためには、ビオラでなくてバイオリンを学ぶ必要があったのですね。なるほど、面白いお話、ありがとうございました!
そうこう賑やかにしているうちに、バーゼルの節分は過ぎていきました。
最後になりましたが、いつもながら、音楽家やゲストをおもてなしして下さる、野川ご夫妻に感謝申し上げます。ありがとうございました!